お水番のおばあさん
私は、水が好きである。まぁ、水がきらいって言う人はあまり会ったことはないけど、そう断言できると思う。
毎週、山のほうへ水くみにいく。田舎だから、あちこちに霊水が湧いていて「いいよなぁ」と思う。湧水は、雑菌が多いから水道水がいいという人もいると思う。雑菌が多いと思われる雨あがりの湧水は、ぐつぐつ沸かして使う。お水は沸かすと火のエネルギーも加わっていいと思うけど、どうかなぁ。とにかく湧水はおいしい。
水くみに行くと、まず「お水番」のおばあさんに挨拶する。それから、観音様に柄杓で水を掛ける。龍神様もいる。こないだ「お水番」のおばあさんに、おみやげを持っていったらとっても喜んでくれた。おばあさんは毎日毎日お水の番をして大変だなぁって思うから、また何かおみやげがあったら持っていきたいなと思う。
こないだ、水をいただきにいくと、おばあさんは「お水番」ではなく落ち葉の番人になって、腰を曲げて落ち葉を掃いていた。「大変ですね」と私が言ったら、「もうきりがないんですよー。ふぅー」と笑っていた。おばあさんは、とても上品な話し方をするので気持ちがいいんだよね。こないだも、そこでじゃがいもを買って、紫色の珍しいじゃがいもでサラダを作ると私が言ったら、「また作ったら教えてくださいね」と言っていた。時々、近所の人が作る野菜が置いてある。夏はスイカだったし、こないだは長細い三日月みたいななすびだった。
いろんな人がおばあさんを訪れて、お水を汲んでいく。そして、みんながおばあさんとおしゃべりしてる。お水をトラックにたくさん積んでいく人もいれば、私みたいにペットボトルに数本の人もいる。
「雪が降ったら来れるかな」って私が言ったら「まぁそれなりですよ」とおばあさんは言った。
私は、ここに水をくみにくる時間が好きなんだな。夏は蝉が鳴いて、春は蝶が生まれ、秋には色づいた木々がわさわさする。冬はきんと冷えた水をくみにきたいな。夜は星がきれいに見えるやろうな。
湧水でお米を研ぐ贅沢。白湯を飲む贅沢。これってとっても豊かだよね。
くみたての水のペットボトルはきらきら光って、ひんやりおいしそう。
秋が深まる頃の、ここの景色もたのしみだ。
「まぁそれなりですよ」
頭に浮かぶ、おまじないのような、おばあさんの言葉。
*
今度のevent、ヒバのスプレーづくりをするのですが、ここの湧水を持っていきます。
とってもいいお水ですよ。
0コメント